「スローイノベーション」とは何なのか?VOL.2

スローイノベーション」とは何なのか?VOL.1

 

Slow Innovation株式会社CEO野村恭彦さん× 自己組織Dev. 田原真人

田原:なるほど。
今の話で既に出てきてると思うんですが、渋谷の30人が最初あまり知らない人で集まるわけじゃないですか。
それがそういう生態系みたいな感じになっていって、そのプログラムが終わってもずっと継続していくというときに、野村さんはそこで何をしてるんですか?
ファシリテーターとして野村さんがそこにいることによってそれが起こってくるわけですよね。
そのとき、「野村さんがしていること」というのは、何なんでしょうね。

野村:そうですね。
僕はコミュニティマネージャーとしての能力が高いわけじゃないんですよ。
僕の立ち位置っていうのは、それを一番面白がって、興味持ってイノベーションに一緒に行こうということなんですね。
渋谷だったらKさんという人がいて、京都ではU君、東北ではAさん。
という風にその地域のコミュニティマネージャー的な動きができる人と私はペアを組んで、僕自身はさっきのようなどちらかというと社会課題を解決するイノベーションはどういうメカニズムで作れるんだということを一生懸命それぞれのチームに介入していきながら、生まれてきたアイデアを本当に実現する、一緒にやるっていうですね。
フューチャーセッションズではやりきれなかったことを、今スローイノベーションでは面白い事をなんでも一緒にやるというスタンスを取っています。
だからもう一人のメンバーにセッションを任せて、自分はもうチームメンバーになって一緒にやるみたいな。
一番やりたいことはファシリテーションではなくて、ファシリテートされた場の中で社会イノベーションみんなと一緒に起こすことなんだといういうスタンスで僕はいます。
学ぶこともその方が多いのかもしれないと思うんですね。

田原:そうすると、野村さんは、今は当事者性を持ってそこのプロセスの中に入りこんでいってる感じなんですね。

野村:そうですね。めちゃくちゃ当事者性は高いです。
いわゆるきっちりとしたファシリテーターではないです。

田原:ファシリテーターとして少し引いたところから場を動かすのではなくて、 自分も入り込んでいくことで、周りが巻き込まれていったり、巻き込んだりし ていくっていう動きが生まれてるっていう事かもしれないですね。
コミュニティマネージャーと野村さんの役割分担があることによって機能していくという風にも聞こえたんですが、それはどんな風になってるんですか。

野村:実際、コミュニティマネージャーとは呼んでないんですが、 僕とペアでやってくれる各地域にあるパートナーというか社員が必ずいて、彼らは全員のサポートをしていく。
よく言えばサポートですけど、悪く言えばいじるというかですね。
あのそっち側の担当というかですね。
とにかく30人を最初集めてきて、30人にちゃんと説明して、30人が来ていろいろ迷うと相談ができてという関係ができるんですね。
僕自身はどちらかというとリーダーシップを取る役割を果たしてしまうので 悩み事の相談はしづらいみたいなんです。
寄り添う側の立場をそちらのメンバーにとってもらって 寄り添って愚痴も聞いて。
例えば第1期の渋谷のときは、企業の人たちが集まってNPOの悪口をいう飲み会があったっていう。 「あいつら、大きい会社を動かすのがどんだけ大変かわかってないんだよなあ」 みたいな、そういう飲み会があったり。
そういう所も一緒になってだよねだよねみたいにやりながら でもこうしたら超えられるよねっていう突破するイノベーション側担当とファシリテーター側担当と。
僕はあんまりファシリテーションしないで、どちらかというとイノベーションを起こしていく側のリーダーシップを一緒にとっていくというそういう役割です。

田原:なるほど。僕がつくっている学びの場でも「表と裏」みたいなのはやっぱりすごい大事で、例えば「こういうことをやっていこう」とぎゅーっと進んでいくと、やっぱり後ろに吹き溜まる感情があるわけじゃないですか。
その吹き溜まる感情をどう扱うかみたいなことがすごく大事で、誰かが表の構造を立てている時には、別の質の違う誰かが後ろの吹き溜まっている感情を扱いながら、本当に思っていることを対話しながら、出していけるようになると表の構造と吹き溜まっている構造が融合してまた先に進むみたいな。
吹き溜まっている構造が扱えないと分裂して崩壊していくみたいな、そういうのがあって、後ろで吹き溜まる感情ってのが鍵だなぁと思ってるんですけど、そうすると例えば地域にいるサポートしてる人が、どっちかっていうと吹きだまっている感情を丁寧に扱う役割分担なのかなという風に聞こえていたのですが。

野村:そうですね。 実はそちらのメンバーの方がこの活動のキーパーソンなんですね。
僕のやってる役割ってほんとは他の人でも代われるというか、単に僕自身がそういうこと体現してるんでなんかいいというか、言ってる内容が特別なことではないんですよ。
地域を守る側のメンバーは、本当にその地域にすごく詳しくて、地域のネットワークを持っていて、地域のことを本当に長期的に考えていることがすごい大事で、 僕の方は、ソーシャルイノベーションを起こしていくっていうのは、ある意味で近道じゃないわけじゃないですか。
なのでそういうことをみんなにやりたいと思ってもらうために、そういう事すると幸せっていう言葉じゃちょっとぴったりじゃないんだけども、そういうことをする人生って豊かだよねーガハハみたいな。そういう人間の体現する人。
それが、もう一つ質問頂いた、「何でスローでいくんだと急いでんのに」という話なんですけども。
スローって言葉はすごく面白い言葉だなぁと思って、もともとスローフードから 始まって、スロームーブメント、スローカルチャー、スローライフとか広がってきましたけれども、言葉はまあ遅いっていう言葉を使ってるんですけれども、遅いという意味よりは、どちらかというと「じっくりと」なんですよね。 なのでファストフードで10分でご飯を食べるのではなくて、自分たちで丁寧に収穫して、みんなでそれを料理をして、コミュニティのみんなと一緒にご飯を食べるというのが、スローフードのムーブメントだと思うんですけども、 例えばパソコンの調子が悪いとき、バーンと叩いたら戻ったみたいな、 これファーストイノベーションなんですよね。
理由もわからずに解決すれば良いと。
一歩引いて、そもそも何が問題だったんだろうか。
もしかしたらこのパソコンをいつも大事に扱っていなかったんじゃないか。
とか自分の生活まで見直したりして、一歩立ち止まって、いろんな関係性の中でこの問題を捉え直して、そして 局所的に問題解決するのではなくて、もう少しホリスティックに問題を解決していこう。
というのが基本的なスローノベーションの立場なんです。
スローイノベーションって何だ?ということをこの2ヶ月間逆に僕自身が一番、いろんな人とディスカッションしてきて、最初名付けた時にわからなかったことが色々わかってきたんですよ。
スローというのは遅いじゃなくて時間の制約を超える事なんだって、今わかってきた事です。
ファーストというのは速くなければいけないんですよね。
スローっていうのはまあ遅くなければいけないわけじゃなくて、早くなくて良い。
実はものすごく制約が外れる。
今スローイノベーションの原則3つ作ったんです。

1. ロンガー :長期的に考えてよろしい。
2.ワイダー:より広い。アイディアの幅を広げて考えてよろしい。
いつもの得意なやり方にこだわらなくていいと。
3.ディーパー:もっともっと関係性を深めてよろしい。
今までは短い期間で限られた自分たちの持ってる強みを活かして、そして浅い関係の中で、素早く結果を出すということが求められているので投資対効果がいいわけですよね。
それに対して長くてもいいよ。
もっともっといろんなことを検討していいよ。
もっと深く繋がっていいよ。
と言われるとオプションが増えるですね。
イノベーションっていろんなオプションの中から、いろんなものを組み合わせてつくっていくものだと思うんです。
制約が解き放たれて、時間に制約を受けず、お金の制約を受けず、そしてネットワークの幅の制約を受けずに発想するっていうこと。
それがイノベーションにとってはものすごく実は近道なんじゃないかなっていうのがスローイノベーションについて分かってきたことです。

田原:なるほど。
「スローなのに結果として速い」というニュアンスが今の話 でよくわかりました。
クロスセクターも例えば株式会社だけとか行政だけというよりは広いじゃないですか。3つ組み合わせてみたいな。 野村さんの中で3つに広げてみたけれども、まだこれでは広がりが不十分だと感じられたということでしょうか。
だからもっと広く、深く、長くと、さらにレンジを広げる取り組みになっているという理解であってますか。

野村:そうですね。
そういう意味では、例えば昨日他の人と話したときに、ソーシャルイノベーションを研究会で取り上げてたら、何でそんなにソーシャルイノベーションばっかりやるんだ。
企業の話をやれって言われた。
という話を聞いて、 これは多分今我々の一般的な経済社会の持っているマインドセットだなと思いました。
メインストリームがあってその周辺にソーシャルイノベーションがあるという考え方なんだろうなと。
僕が広げてといった考え方というのは、 ソーシャルイノベーションというのは、その地域あるいは社会の新しい構造を作っていることなので、その一部に企業の活動がある。
ソーシャルイノべーションの一部としてなぜ企業を取り上げないんだっていう。
ソーシャルイノベーションが周辺にあるという、そういうマインドセットがまだ我々の経済社会の中にあるんだろうなって思ったんですよね。
だから、僕自身が企業・行政・NPOという、3つの三角形で捉えていた事がちょっと狭かったんじゃないかなあっていう風に思ってるんですね。
スローイノベーションで挑戦しているのは、我々がやっている経済活動とそれから政治活動と宗教活動みたいなのがあったとしたら、これをまたがっていくこと、つまりビジネスを考えるときに、政治のことを考えちゃいけない、宗教のことを考えちゃいけない、というのはなくて、
「そもそも我々はいったい何を選ぶんだ」
「どういう社会をつくりたいと思うんだ」
「何を幸せと感じるんだ」という、
こういうものを単にマーケティングとかロビイングというのではなくて、もっと根本から問い直していくところに行かないと間に合わないんじゃないかなと。
いくらすごい企業を作ったとしても、どんだけフューチャーセッションがユニクロみたいになったとしても、社会は変わんないんじゃないかなって思ったんです。
だから3つのセクターを超えて、もっと人間の持っている大きな価値観全体にアプローチしていきたいなという。
ラッキーなことに今一緒にやってるKさんは選挙プロデューサーもやっていて、 彼はこっちのクロスセクターの仕事をしながら、一方でこれから出ていこうとする市民活動をしたいと思う政治家の事務局もやったりしていて、 いろんなインスピレーションをもらっているんですが、 やっぱり市民派の方が市長とかになって、国と繋がってないからあんまり予算が とってこれなく、やりたい事はあるけど何にもできない状態になる事って結構あるんですけど、 僕らがやるべきことは、そういう政治の世界も、政治の世界の都合で動かすのではなくて、
「本当に自分たちはこういうものを選びたいんだ」
いうものをみんなで合意していってそれは政治の力だと思うんですけど、そのイノベーションを起こしていくのは今度は企業の力である。
だから政治を本当に健全にさせるのはイノベーションの力なんじゃないかな。
ビジネス側でも、今までだったら同じマーケットでみんなで安売り合戦みたいなことをやってたところを、「俺たちこういうものが欲しいよ」
という社会側のニーズが変わることにより企業を健全にさせる。
そういうものをつくっていく。
そういう政治とビジネスの良い関係を作っていくというところがこのスロー イノベーションの間接的にやりたいことだと思ってます。

 

スローイノベーション」とは何なのか?VOL.3

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