どうすると自己組織化的にいい音楽が奏でられるか? vol.02

コードタクトCEO後藤正樹さん× 自己組織Dev. 田原真人

一つのゴールに向かってみんな同じことをするっていう感覚を早く取り除きたい

田原
なるほど。 サイボウズで協働学習に使えるようなプログラムというかプロダクトを作って、そこから今のコードタクトの方に移っていくっていう流れなんですか。 


後藤
スパンは結構間があくんですけど、まずサイボウズに入って企業向けの情報共有の良さみたいなものを知って、それまでは基本メールだけですよね。2006年とか2007年とかなので。 

そういう状況でいろいろな理解をして、一旦ちゃんと学校の現場を見ようと思っていて、先輩と一回起業をしました。その起業は、わりとアナログで、高校に行って実際に授業をして、予備校講師派遣みたいな感じですね。 

学校の成績を良くするってことと、その時はまだガラケーだったんですけど、ガラケーで i モードアプリとか僕がプログラミングして作った速読英単語のアプリとか作ってたんですよ。Z会の。 

いわゆるコテコテの e ラーニングですよね。 スマホでドリルをしましょうとか、そういった学習の現場、高校の現場ってものと、いわゆる e ラーニング的なコテコテの ICTってものをそこでずっとやっていて、そのうちにやっぱり改めて協働性の大切さって感じて、そこで作り始めた のが、今のスクールタクトの原型です。 


田原
なるほど。でもその時期はまだ環境が追いついてなかったってことですよね。 


後藤
そうですね。




田原

まだ i モードぐらいしかなかったわけだから、その状況で協働学習といってちょっとなーみたいな。 それがだんだんテクノロジーが後藤さんの作りたい世界に追いついてきて、後藤さんが作りたいようなものが作れるような環境が徐々に整ってきたって感じですね。 


後藤
それが2010年くらいから道具としては揃ってきて、ただまだ実際の学校では追いついていないんですけどね。技術的な意味でいうと2010年くらいに追いついてきたんで、そこから作り始めて、今度2014年くらいから学校環境、現場も少しずつ追いついてきたので実際に使ってもらえるようになったって感じですね。 


田原
すごい面白いなと思ったのは、音楽にしても最初にこういう音楽を目指したいっていう音楽があって、そのコンセプトとかイメージがあって、それからだんだんその音楽ができていくじゃないですか。協働学習もこういう協働学習があってというのが先にあるから、それを実現するためにどういうプロダクトであったらいいのかというのが、クリエイトされていくという。 

後藤さんは何なにがあってというのが、常にイメージが先にあって、それが後から音楽とかソフトウェアが作られていくみたいな印象があるんですが、イメージというのは日々作られて更新されているようなものなんですか。 


後藤
そうですね。更新されていっていて、昔は学習者視点というよりは教員視点だったんですね。先生がいかに教えやすくなるかとか、それによって生徒がどういうふうに良くなっていくかということを考えたんだけども、徐々に児童、生徒、学習者目線になっていきました。 


音楽もなんですけれども、いかに主体的であるかということに行きついて、音楽の場合で言うと主体性はどちらかというと奏者でなくて、お客さんの方に私はずっと向いていて、お客さんが如何に主体的に聴くのか、聴けるのかという環境を作るということに、すごく興味があります。 


田原
普通に聞くと、お客さんの主体性ってあまり考えられていないテーマのような気もしますが、お客さんの主体性ってどんなことなんですか。



後藤

何かをするということは、結局プレゼンテーションも全部一緒ですけど、聴いた方々にどういう影響を与えたいかっていうことを設計することになるわけです よね。 

今まで、割と音楽って、そこはある程度芸術的な部分があるから、観客に委ねるって言うところはあるんですけど、委ね方にも複数あって、勝手にしてくださいって放置してしまうのが今のやり方のような気がしていて、そうじゃなくてせめて主体的に聴くというところまでは担保させましょうって思うんですね。 

それは具体的に何かって言ったら、建築と音楽って結構近くて構造の美しさみたいなものがあるわけですよ。 

テーマがあってそれがどういう風に遷移していくかとか、例えば元々長調だったんだけども、それが全く同じ主題なんだけど短調なっていってとか、というロジックとか構造というのがあるんだけども、それをもっと主体的に感じながら聴くっていうことをしてもらわないと、次のステップに行かないんですよね。 

だからある種、芸術って聴衆を、言い方は悪いですが、育てるという必要性もあって、そのプロセスをちゃん作っていかなきゃって思ってるんですね。 

学校教育も同じだし、一斉授業ばっかしてた生徒というのは受動的じゃないですか。だから自分でこういうことをしたいと思わないわけですね。思いづらい環境なわけですよね。 

勝手に椅子に座ってれば、「これ学んでください。」と放り投げられて、それを覚えてテストでいい点取ればいいというふうになりがちなシステムなので、それもそうじゃなくて、こういうふうにありたいと思えるような余白を残しておくのが学習においても音楽においても必要で、そうしていかないと主体的な人間にならないと思っています。 


田原
後藤さんは自分がイメージしていたものを、現実が超えていくのがすごく好きだとおっしゃっていたんですが、例えば音楽にしても演者や観客の主体的な関わりよって自分が想定していたものを超えていくものがそこに現れたり、教育の現場でも例えば教師が想定してこんな風になるんじゃないかなっていうのを学習者が超えていくとか、そういう瞬間が起こるようなものを後藤さんは望んでデザインしているのでしょうね。


後藤
そうですね。


田原

スクールタクトは、協働学習が起こるような後藤さんの理想があって、そこに向けて今作られていっていると思うんですが、今、後藤さんとしては、何パーセントぐらい達成できてるって言う段階なんですか? 

後藤
20か30%ぐらいという感じですね。 

田原
20か30%ぐらいなんですね。


後藤
そうなんです。最初は2009年から作っていたんですが、最初の5年6年はほぼ僕一人で作っていたので、当然ペースが遅いんですけど、2015年ぐらいからチームを作っやっていて、2019年で20% 〜30%ということは、本当に間に合うのかなあといろいろ心配しています。


田原
後藤さんの中の達成できている部分と、ここはなんとか早急に達成したいと思っている部分というのは、どういうところなんですか。 

20%~30%に含まれてる部分っていうのは、多分優先度の高いところが開発されていると思うんですけども。


後藤
そうですね。 協働という、たとえば文字ひとつとっても協働って何パターンか文字があるんですね。 あの共に同じという共同もあれば、協力の協に同じもあるし、協力の協に働くもある。東大とかでは、強調学習といって、調が調べるの調のものもある。 ある種4つあるわけですね。種類が。
今、我々ができているのっているのは、協に同じの協同。 協同はできているけど、働くの方の協働は、できてないんですよ。 

というところにすごい僕は課題感を思っているというところですね。

本来、働くの方に行きたいんだけど、まだまだそこが開発的な意味でもそうだし、 我々の学習環境とか学習スタイルとかいうのにもできないところに、すごく私の中では早くやらなければっていう感じがあります。 


田原
今すごい面白いなと思ったのですが、 もともとサイボウズとか企業でグループウェアの開発に関わったということは、まさに働くのところを体験したわけですよね。 働くことを体験してから、学校の方に行った。 

今は”協同”のところはできていると考えているということですが、学校のグループ学習みたいなものというのは、将来的にサイボウズでやっているような働くの方の”協働”につながっていくと考えているから、”協働”というところに行きたいって事なんですか? 

”協働”のところ行きたいっていうその心は、どういうところにあるんですか? 


後藤
心は、一つのゴールに向かってみんな同じことをするっていう感覚を早く取り除きたいからですね。 

やっぱり今だと、例えば数学の微分積分ってものに対して同じ問題がみんな解けるようになる。同じ方法で同じように解けるようになるっていうのがゴールになってしまってるから、同じ方の”協同”になっているわけですけど、そこの違和感って言うところ。 


田原
なるほど。 そうすると違うことをやっている中で、いろんな役割があって、何か物事が実現していくっていう、その体験的な理解みたいなものが必要だっていう事ですかね。


後藤
そうですね。だから2つあって、まずどの山を登るかっていうことと、どういう登り方をするのかという2つあった時に、今両方とも固定されてるわけですね。 

微分積分に対してこういう学び方でやりましょう。それを片方だけでも外したい。 例えばどの山を登かを自分で決めるのは今の状況では難しいならば、山の登り方を多様にしていきたいというのがある。 

まずそれができるだけでも、協働の働が働くようになる気がしてますし、もちろん最終的にはどの山を登るかも自分で決めるような教育にしていきたいと思っていうところですね。 

田原
なるほどわかりました。
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