どうすると自己組織化的にいい音楽が奏でられるか? vol.01

コードタクトCEO後藤正樹さん

なんてことない存在のように一見見えて、その人がすごく重要だみたいなことも世の中にたくさんある

田原
今回はコードタクトのCEO後藤正樹さんにお話を伺いたいと思います。宜しくお願いいたします。 まずコードタクトのタクトというのが指揮棒のタクトということから分かるように、後藤さんはすごく変わったプロフィールというか、指揮者であり、物理の特に僕と同じ複雑系とかそっちの分野の物理をやって来ているようなところで、今の協働学習とかの分野に入られていますが、 後藤さんの中では指揮者としての後藤さん物理をやってきた後藤さんというのは今の活動にどんな風につながってきているんですか。 


後藤
まず音楽で言うと、元々のきっかけは音楽を表現するっていう方法っていろんな手段があるわけだけど、僕の場合指揮をするという手段が一番自分に合っていたというのが元々きっかけなんです。
体験としては自分の想像する音楽があるんですよね。こういう音楽があるべきだ 、あってほしいという。  たまにそれを超える瞬間があるわけです。実際の演奏として。
それがすごく楽しくて。そうなるためにはどういう条件が揃うといいんだろうかと考えるわけです。それって例えば管理型の多分音楽だとならないんじゃないかなと思うんですね。がっちりこの小節この音はこうを弾きましょうと全部伝えてしまって、さあやってくださいだとやっぱり自分のイメージを超えないわけですよね。
超えるためにはそういう考えではなくて、奏者の演奏を引き出しつつも、奏者の能力を最大化するってところに注力した方がいいし、もっと言うと奏者自体がお互いにお互いのやっていることを聴きあい知り合い、であれば僕はこういう風に演奏しよう、みたいな勝手に自分たちで音楽のベクトルをそろえていくみたいなところを目指したいという風に思い始めたのが、音楽としてのある種の自己組織化的な部分だったりします。
教育においても、教育って一斉授業がすごい多くて、僕も予備校で物理教えてたりしたわけですけども、どうしても物理だと一人で勉強することが多くて、紙と鉛筆で色々あーだこーだ考えてってなるわけなんですけど、そこに対して薄い協働性みたいなものを設けると、すごいもっといいのになぁと思うんですね。
なんていうんだろうな。励まし合いながら勉強する友達みたいな、そういったものがあると良かったなというのも思います。
物理現象を考えてみても、自己組織化っていう、例えば有名なのが蛍の同調現象だったりとかもそうですし、僕が少し研究していたのが キーストンスピーシーズ(★要確認)っていう研究で、例えばキツツキ。森にキツツキがいるわけだけどもキツツキって謂わゆる生態系中ではたいして上でもないし、わりとどうでもいいんじゃないかって思いがちなんだけども、キツツキが木に穴を開けて巣を作ると巣を作る能力のない鳥たちが余った巣に住み続けて鳥の生態系が維持できるみたいなのがあったりするわけです。
つまり、なんてことない存在のように一見見えて、その人がすごく重要だみたいなことも世の中にたくさんあるわけですよね。そういった複雑なネットワークの中で複雑なものを見るのもすごく大切ですけど、なんとなくおぼろげながら実はそのたいして重要そうに見えないけど重要なものというのがあって、そういったものをもう少し見てみたいというものが物理と音楽にはありました。
田原
なるほど。面白いなと思ったのは、音楽をやりたいっていう人の中で、例えば楽器や歌にいくのはわかるんだけども、それが指揮者にたどり着く人の気持ちというか好みというか、僕は後藤さん以外に指揮者の人を知らないというのもあるんですけど、なんで指揮者にたどり着いたのかというところと、複雑なものの中にある構造とか音楽というものでも音楽の全体がどうなっているといいのかみたいなところにすごく関心が向くとかそういうところを共通の部分として聴いていて受け取ったんですが、後藤さん的には音楽の中で何で指揮者だったのか、物理学の分野で何で複雑系だったのかというのは、ご自身の中ではどういうふうに整理されているんですか。 

後藤
音楽においては、たまたま指揮の能力が他に比べて絶対自分の中で高かったって いうのがあるんですけど、なんでしょうね。
田原
指揮の能力というのが、僕たち知らない人にはわからないんですが、何を持って指揮の能力っていうんですか。 

後藤

いろいろ分解するともちろん音楽的な知識ですよね。例えば和声とかリズムとか 作曲的な技法の知識、あとは単純に腕や体で音楽を表現できるかどうかといったこと。あとはそれをちゃんと言葉でも伝達できるかどうか。想いを伝えられるかどうか。あとは聴いた音楽をちゃんと評価できるかどうかというようなことになってくるんですが、僕の場合は元々パラレルにいろんなことをやっていたのもあるんです。楽器だと常に練習をしていないといけない。そうしないとどんどん能力が落ちていくんだけども、指揮者の場合だと例えば経営をするとか、いろんなことが全て指揮者として還元できる部分があって能力として。 いろんな経験をすればするほど指揮者としても良くなってくるというのが相乗効果としてありますね。 基本的には人間とは何かとか言ったところが、指揮にも本質があるので、どうするとその人たちの能力を最大化できるかっていうと、心理学的な部分があって。 物理についても、普通物理っていうのはの物性とか宇宙とか物に適用するわけだけども、人間の心みたいなのに興味があって、物理の中で唯一その心に触れるものが複雑系や人工生命のジャンルだったので、そこにすごく魅力を感じたんです。 哲学とか心理学とかある種統計的な方法論だったりとか、 哲学みたいな定性的 というかを試行するアプローチもあるけれども、 物理みたいなもうちょっと数式を使って生命とか心にアプローチをするというところに惹かれたものがあります。
田原
なるほど。 それで複雑系の研究した後にサイボウズに入られるんですかですね。
後藤
そうですね。
田原
それはどんなことを目指してそこに行かれたんですか。
後藤
サイボウズっていう会社が元々は情報共有グループウェアを作っていて、 みんなの知恵を集めていくと、もしかしたら天才に勝てるかもしれない とか、もしくは非効率な部分ですよね、本当は困っているけれども助けてって言えないようなものでも、グループウェアで情報共有を通じて解決していこうという部分にすごく惹かれた部分があって、それは音楽で言ったところの どうすると自己組織化的にいい音楽が奏でられるか ということでもあります。 サイボウズはそれを企業でやろうとしているんだなあというイメージを持っていたんですね。 僕は最終的に学校教育で同じようなことをやりたかった。 まずはサイボウズで、企業でどうやって情報共有することによっていい組織化ができるのかっていうのは興味があって、それを学んだ上で学校教育に生かしたいなと思っていたということです。
田原
なるほど。最初から学校教育に生かしたいという思いがあって、そのための力をつけるイメージで最初にサイボウズにいったっていう感じなんですね。
後藤
そうですね。前職の企業には申し訳ないですけど、元々はそういう気持ちはありました。
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