コミュニティのアイデンティティ開発事例VOL.2

井尾佐和子さん × 自己組織Dev. 田原真人

“みんなの言霊を入れて、もう一度再定義しようと思った”

田原
前段のところを掘り下げて伺いたいんですが、一般的には会社だと会社のメンバーと顧客と言う人がいると別れてしまいますよね。クライアントから仕事を受注されて価値を提供するという構造が現れてしまいがちで昔は特にデザインとかをやってるとクライアントから受注されるという関係ができてしまって一緒に作ると言う対等な関係じゃない構造の中でうまくいかないこととかが感じられてきたと伺っています

そうじゃなくて一緒に作るという関係をどうやって作っていくかという時に一緒にやってきた組織の内部に人でもなくライブのお客さんでもなくファウンダークルーというちょうど間を橋渡しをする中途半端な媒介的な人が当事者意識を持って関わってくれるという存在ができたことで組織的じゃないコミュニティ的な活動が現実のものになってきたのではないかなと理解しました。ファンダークルーの理解はそれで合っていますか ?
井尾
本来であればサービスを提供する側と受け取る側なんですがどちらを向いてるかだなと思ったんです。組織を円だと考えたときに内側を向かってるのがユーザーだとしたら、提供側というのは外側を向いている。関係性ができたり役割を持つことによってステージができると思ったんです。方向を向き変えるステージ、ターンする場所があってそういうステージの機会を我々は作っているんだなぁという事に後から気づきました。
一緒に活動するというステージ。向きを振り返るステージによって、人は受け取るだけじゃなくて、どうやったら提供できるのか、どう見られているのかというのをはじめて考え出すのだと思います。
そこまで、組織として、どういうことを大事にしているのかを、我々の言葉では「私を生きるワタシクリエイト」と言っています。
それを言い続けていたら、同じ言葉じゃないんだけど、同じような願いを持ったメンバーが残ってくれた。それって一般の組織でいう経営理念だなと思ったんです。
その理念に通じ合っているメンバーが、その組織に長く勤めているじゃないですか。長いか短いかがいい悪いじゃなくて、共通の想いとして個人個人の中にきちんと根付いているという一般の組織でいう社員は、やっぱりコミュニティでも同じ構造ができるものなんだなと感じました。
それは、改めて言葉にすると、どういうものなのか、そして、みんなの言霊を入れて、もう一度再定義しようと思ったんです。
田原
すごく面白い話が出てきましたね。普通、会社のビジョンは、会社の真ん中にあって、会社の人たちが協力して働くために道しるべになっているというのが当たり前だと思いますが、井尾さんのところでは、「ワタシクリエイト」というコンセプトとかビジョンを掲げたら、組織の内部と外部の間にあるステージに集まってきた人たちが、ワタシクリエイトと響きあっていて、組織の内部と外部とが融合してコミュニティのビジョンになっているなとやりながら気づいていて、
だとしたら、そのステージに集まってきた人のコミュニティの人たちの言霊も入れながら、もう一度、コミュニティアイデンティティのビジョンにしていったら活動がパワフルになっていくんじゃないかということで、やってみようということになったんですね。
井尾
結局、それをアトリアで作り始めた私が一人でまとめることもできると思います。
あとは、経営層でやってしまうこともできます。
でも、それだと、自分ごとにならないじゃないですか。時間もかかるし、お金もかかるんだけど、そこは、本当に建築物で言うところの柱であったり基礎であったりなんだなと感じているので、そこはしっかりと上に高いタワーを立てるんだったら、基礎工事をしっかりしないとねというイメージで、ちゃんと開発したほうがいいんじゃないかという話があって、みんなで対話をしていくプロセスを踏むことにしたんです。
田原
ステージというのも、井尾さんがやりながら発見した概念だと思うし、今まで世の中に無かったものを考えながら、体感を手がかりにして作っていくというアート的な取り組みだと思います。
同じような感覚が相手の中にもあれば、「自分の考えていたあれのことね」と通じるけど、分からない人にはいくら説明しても通じないという状況になると思うんですよね。
井尾
本当にそうです。
田原
その中で、井尾さんは、分かってくれる、分かってくれないとうものと、どんなふうに向き合って、モヤモヤの2年間を過ごしてきたんですか?

「ほらね」って、「このこと!」

井尾
いやー、本当にモヤモヤしていましたよ。
分かりずらいと言われると、あなたが分かっていないだけですよねと言いたくなるし、伝え方を少しみんなと共有できるやり方はないかと常に考えていましたね。
本来であれば、分かりやすい、お金を払っているから提供してくださいよという関係性でいいじゃないですかということなんですが、私は、その関係を超えたいんだということを言い続けるということと、実際に起こった出来事を共有して、「ほらね」って、「このこと!」と示すこと
たとえば、言っていることが分からないというメンバーがいたとしても、別の新しいメンバーが、別のルートから同じような思想に行きついていて、別のインターフェースで発信してくれる。
私とその人が意気投合している姿を、分かりずらいと言っていた人が見るというシーンとか。
「外側の人でも分かる人は分かるんだよ」というシーンを見てもらうということとか。似ているようなことを言っている他の団体の人と出くわすシーンがあったりとか、こういうことだよねとメンバーが情報を持ってきてくれるようになったりと、だんだんなってきました。
田原
なかなか伝わらないままモヤモヤの中で、ちょっとずつ手がかりというか、なんとなくこういうことなんだよね、この範囲のことなんだよねとかの共有を時間をかけて少しずつになってきて、今だったら一緒に話して言葉やコンセプトが、この人達だったら分かってくれるというような感覚が育ってきたということでしょうかね
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