自己組織化型プロジェクトの進め方「むすびサイクル」とは? Vol.1

木戸伸幸さんインタビュー

自己組織化型プロジェクトの進め方”むすびサイクル”について、企業研修の場でむすびサイクルを経験し、その後、そのエッセンスを様々な場で応用されている木戸伸幸さんにお聞きしました。

木戸伸幸 フリーランスの組織変革ファシリテーター/「ティール組織ラボ」プロジェクトメンバー 1987年、大阪生まれ。2010年に新卒でNPO法人を共同で起業し、その後は別のNPO法人に転職。2013年、人が集う場での化学反応を生み出すファシリテーションに出会い、ファシリテーションや組織論について学び、実践をはじめる。2019年に独立し、フリーランスの組織変革ファシリテーターとして組織づくりの伴走支援を行う。2020年から場とつながりラボhome’s viが主宰するティール組織に関する自主事業「ティール組織ラボ」にジョイン。ティール組織を含む進化型組織についての研究やプロジェクト運営・ミーティング設計などの役割を担う。

話を聞いた人:伊原あつこ

むすびサイクルとは?

伊原
木戸さん、宜しくお願いします。最初に、”むすびサイクル”とはどんなものか教えてもらえますか?
木戸
プロジェクトの進め方にはいろいろありますが、むすびサイクルは、自己組織化的にプロジェクトを進めていくときの一つのフレームワークで、場とつながりラボhome’s vi のオリジナルのものです。(場とつながりラボhome’s vi 代表理事 嘉村賢州氏が考案。プロジェクトの進め方を①統率型②参画型③自己組織化型に分類して説明している。

プロジェクトが共創的に好循環で進んでいくときには独自のプロセスがあり、むすびサイクルはこのプロセスを可視化し、今、何をすれば良いのか状況判断をしやすくしてくれます。また、プロセスをステップとして明示することで、プロジェクトが進まなくなったときに、ステップごとに物差しで振り返り、分析することが可能となり、適切な改善の一手を打つことができます

以下がむすびサイクルのステップです。

1.前提共有
2.チームビルディング
3.目的探求
4.未来像の想像
5.シナリオ
6.成功要因
7.詳細計画
8.実施
9.振り返り

リーダーが明確なゴールを決めて、引っ張っていく統率型の進め方ではなく、大まかな方向性を共有し、メンバーが対等に対話を重ねながら進めていきます
計画段階で時間をかけ対話を重ねる参画型のアプローチと比較すると、実際に動き始めることで、気づきや学びを重ねていくという違いがあります。どんなアクションにも失敗というものはなく、学びとして捉えて進んでいく。経験しながら道ができていく。そんなプロセスで進んでいきます。
伊原
リーダーが統率していくタイプではない中で、プロジェクトが共創的に好循環に進んでいくためのエッセンスが詰め込まれていそうですね。

現場レベルの視座から、一気に会社レベルの視座へ

伊原
木戸さんは、最初、むすびサイクルを企業研修として受ける側で経験したと聞いています。
木戸
僕がむすびサイクルに出会ったのは2015年です。 当時、嘉村賢州さんが社員研修をしていた企業で働いていました。 僕が入社した当時は、スタッフが15人〜20人くらいの法人だったのですが、少しずつ増えていって、50人くらいになり、部署も5〜6部署くらいになっていきました。
その頃になると、経営陣が現場の細かいところまでを見るのが難しくなってきて、それまでの経営陣が中心に考える研修プログラムでは現場の状況とにミスマッチが起きるようになっていました。
そんな中、代表と賢州さんが相談し、もう少し研修の設計を現場に委ねる形での運営に一気に舵をきったんです。その研修設計と運営がむすびサイクルを使ったものでした。
伊原
会社が拡大していき、研修内容も変化が求められていた中で、むすびサイクルを使った研修が始まったのですね。 むすびサイクルを使った研修で大きく変わったのはどんなことですか?
木戸
まず、研修の内容を作るところから、社員の声を聴きながら社員自らが作っていったところが大きく違います。
各部署から一人ずつ選抜したプロジェクトメンバーが集まって3時間✖️3回の会合で、社員研修を作りました。
「(急に呼ばれても)何ができるかわからない。」と言った言葉や、プロジェクトメンバー間にも情報差や温度差があるというところから始まったのですが、むすびサイクルを使って、前提共有、目的探求、と進めていき、一人ひとりが感じていることや考えを伝え合いながら研修を作っていくと、研修当日に「なぜこれをやるのか。」という意図や自分自身のストーリーや思いを交えて5分くらいの台本を作って読み上げるメンバーが出てきたりして、メンバーがどんどん主体的に関わり始めました。
そして、実際に研修当日を迎えると、設計メンバーの想いが伝播し、研修後半には一般の参加者も受け身ではなくどんどん積極的に参加している光景がそこにはありました
伊原
プロジェクトメンバーだけでなく、参加者も主体的に研修に参加するようになっていったのですね。 印象に残っているシーンはありますか?
木戸
むすびサイクルを一番最初に回した研修が一番印象に残っています。 各部署から選抜されたプロジェクトメンバーで社員研修を作るための事前会合では、 「今法人内で感じるモヤモヤは?」 「エネルギーの滞っているところは?」 「うまく機能していないところってどこ?」 そんな問いかけに、みんなが付箋に書き出していきました。

賢州さんが、 「会社というのは、経営戦略、事業戦略、組織戦略の3つの領域があるんです。 みなさんが日々仕事をしながら感じている違和感やモヤモヤ、うまくいっていないところ、課題と思うところなど付箋に書いたものは、3つの領域のどこのことなのかを意識して1人ずつ貼ってみましょう。」 と説明すると、みんなが大きな模造紙に付箋を貼っていきました。

そうすると、「行政からの委託事業だけでは安定しない。」など、経営戦略と事業戦略の中間みたいなところが出てくることもあれば、部署が増えてきた中で起きてくる組織課題みたいな部分ができたりして、1人ずつ読み上げながら付箋を貼り、全体を眺めながら話していくと、現場やプロジェクト、事業の中で一人ひとりが感じた違和感を入り口にして、一気に会社全体を俯瞰して眺めるような話し合いになっていったんです。

スイッチが切り替わった!と感じました。現場レベルの視座から、一気に会社レベルの視座にあがったんです。しかも、みんなが対等に話せるような状況になってきたこともあり、話し合いの熱量もあがっていきました。

段々と「妥協して研修を作りたくない」という想いが強くなっていき、本番の内容がなかなか決められずに、事前会合は、延長に延長を重ね深夜まで続きました。一人一人が責任感を感じながら主体的に進めていることが熱く伝わってきました。

▶︎【心の奥底からのチェックイン 】に続く

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