自己組織化型プロジェクトの進め方「むすびサイクル」とは? Vol.2

木戸伸幸さんインタビュー

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心の奥底からのチェックイン

木戸

そうして、研修本番を迎えたのですが、1日目が終わったあとに、経営者からフィードバックがありました。研修の進め方について、経営者が期待していたものとプロジェクトメンバーが研修を通じて実現したかったものに関する認識や期待値のズレがあったとわかったんです。

経営陣とプロジェクトメンバー、そして賢州さんも含めて、対応策を話し合うためにまた深夜まで話し合いました。

そうして迎えた本番2日目。 チェックインは、プロジェクトメンバーから始めることになったのですが、このチェックインが心の奥底からのチェックインになっていったんです。

「もう自分たちのチームだけでは、どうやって来年度に向けて準備をしていけばいいのかわからない。困ってます。」

「自分たちの出来ていないことを指摘されるかもしれません。でも本当に良くしていきたいんです。みなさんの知恵を貸してほしいです。助けてください。としか言えないです。」

など泣きながらチェックインするメンバーが半数以上でした。

その後、全員で1年の振り返りをやっていったんですが、普段のミーティングの振り返りでは起きないような深いレベルでの気づきが得られました。その光景に経営陣も満足感があったようで、今後もこの形式でやっていきましょうということになっていきました。
伊原
チェックインをきっかけとして、場が深まっていったのですね。 心の奥底からのチェックインがされた背景には、何があったのですか?
木戸

むすびサイクルのプロセスで考えはじめたことで、メンバーが自分の組織に対する愛着や働きがいを実感し、同時に経営者の葛藤や経営の難しさもどんどん自分事になっていき、前のめりに意見を言い始めました。一方で、会社を良くしたいという思いは高まるものの、研修という時間をどうすればいいのかが見えない悶々とした時間が続きました。メンバー全員が考えて考えて考えても見えてこない中、明日の研修自体がどうなるかわからない不安もあり、前日の経営者との認識のズレという課題も加わって、自分たちだけでは解決できないと思いました。それが心の奥底からの「ごめんなさい。助けてください」と言う言葉につながったんだと思います。

自己組織化的な視点で見ると、仲間が心の奥底から「ごめんなさい。助けてください。」という言葉で弱さをさらけ出したことが、他のメンバーの心にも火をつけたのかもしれません
伊原
「助けて」と言える環境というか、関係性というのも築かれていたのではないかと思いました。 その後はどんな感じで進んでいったのですか?
木戸
二日目の内容は、当初の計画に対して1年間何をやってきたのかを壁に書き出して、それをみんなで囲って振り返っていくということをやったのですが、出来ていないことを、「出来ていない。」と言わなければならない事業もあるので、当事者からするとつらいわけですよね。

そのときに、「出来ていない理由は何かあるの?」という原因追求目線になってしまうと、当事者も防御姿勢になってしまう。そうなると、本質的な話し合いは難しくなってしまうし、次につながっていかない。

「助けてください。」と自分たちの出来ていない点を伝えると怒られるんじゃないかと無意識で思いがちですが、実はその逆で、弱さを正直にさらけだしたことで、「良くしたい!」という共感の連鎖が生まれました。経営幹部クラスの人も、同じ部署のメンバーも、それ以外の部署の人たちも、みんな前のめりになって、「何が起きていたんだろう。」とか、「どうすると本当は良かったんだろう。」とか、「次に何をしていけるんだろう。」というところを本音で話していけたんです

もちろん、多少心がヒリヒリするようなシーンもあるんですが、でも、「責められるな」とか、「防御しないとこの場にはいられないな」という雰囲気とは明らかに違った空気感で、次はこうしたらいいんじゃないのという話し合いができていきましたね。

ティール組織っていうのはそういうことが、ボコボコ現場でたくさん起きまくっている状態だと思うんですよね。

組織活動って、複数のプロジェクトが束になってるような集合体だとも考えられるので、 そうすると、プロジェクト運営が肝になってくるのかなと。
そして、プロジェクトを進めるときの、どういう風に人が集まって話し合い、準備し、当日を迎えていくのかという、一つの原理原則がむすびサイクルにあるのだと思います。

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