ピラミッド型組織からトーラス型組織へ

B面解説

ブランディングのパラダイムを変える

ピラミッド型構造におけるブランディングは、ピラミッドの頂点で創り出されたブランドイメージを標準化して大量生産することで、組織全体まで行き渡らせるという仕組みです。そのためには、外発的動機によってトレーニングをする必要があるため、報酬としてのお金が必要になります。 
この方法だと、ブランディング力=資金力となるため、お金があるほどブランディングでき、ブランディングによってお金を稼ぐことができるという増幅サイクルが回ります。その結果、経済格差がどんどん大きくなり、貧困化した人達が自然資本を切り売りすることで環境が悪化し、地球の持続可能性が危ぶまれるところまで来ています。 
 
「ブランディング力=資金力」というパラダイムは、原理的に暴走する可能性を秘めており、その暴走は、地球環境に壊滅的な打撃を与えているのです。 
  
だったら、ブランディングのパラダイムを変えれば、暴走を止めて、社会の進む方向を転換できるのではないでしょうか? 
  
岡本さんの「自己組織化している組織でないとブランディングできない」という話は、ブランディング力=資金力というパラダイムの転換を表しています。自己組織化は、言い換えれば自然の摂理ですので、「自然の摂理に沿ったブランディング」とでも言ったらよいでしょうか。 
 
「自然の摂理に沿ったブランディング」を可能にする集合体の特徴は、内部と外部の区別が曖昧だということです。理念に共感した人達が、組織を超えて理念の実現のために動き出すという作動そのものがブランディングになっているのです。 
  
このような集合体の特徴を表すために、次のような図にまとめてみました。 集合目的によって所属無しで集まるムーブメントを「渦(うず)」と呼ぶことにします。フローレンスは、外部の人達をクルーと呼んで渦に巻き込んでいったのが特徴だと思います。

渦を象徴的に表す図形は、トーラス(ドーナツ型)です。 自然発生して循環する構造の多くを、トーラス構造で説明することができます。東洋哲学の陰陽太極図もトーラス構造を斜めから見たものです。

https://youtu.be/FI3Eg5jKsaY

NPO法人フローレンスや、反転授業の研究では、内部と外部の境界が曖昧であり、「消費者を作らない」という考え方が共通していました。だからといって、誰もが同じ役割をしているのではなく、代表ー副代表という役割や、インターンという役割があったりしています。そして、それぞれの関係者が、外発的動機ではなく、ビジョンを実現するために力を合わせて活動しています。
 
内部と外部の境界が曖昧だというのは、旧来の組織と渦型集合体とを分ける上で、とても重要なポイントです。内部を外部から切離してフレーミングすると、フレーム内部を思考によって最適化することが可能になります。線形思考の持つ論理構造の特徴はAからBへと一方向的に進み、逆行しないことです。この線形思考の論理構造が現実化したのがピラミッド型組織です。
 
一方、生物は、外部と物質、エネルギー、情報をやり取りし続ける非平衡開放系であり、その中で自己組織化する循環構造こそが、いのちのはたらきの土台です。そして、開放系に発生する循環構造は、線形思考の論理構造で扱うのが苦手な領域である非線形現象です。
 
本稿では、このような、内部と外部とがゆるく繋がりながら、循環構造が自己組織化する集団活動を、トーラス型集合体として理解することを試みてみたいと思います。
 

集団活動をトーラス型集合体としてモデル化

まず、代表ー副代表の組をどこに置くのか?ということなのですが、ひとまずリング状にして、ドーナツの断面の円の中心を通るように、水平に埋め込んでみようと思います。 3次元立体をイメージするのは難しいので、水平断面と鉛直断面の2つの断面図について考察してみます。まずは、水平断面から見ていきましょう。 トーラスの水平断面は、次のような中空均衡構造になります。 代表と副代表がリーダーシップをとって実現する活動を支えるコアメンバー(緑色)が、組織の内部にも外部にもおり、その内側と外側に、さらにゆるく支える協力者(水色)が存在しているという構造。
 
オレンジの円の内側と外側とを隔てるのは、育成の仕組みと、構造維持のための作業に関わるかどうか。
 
次に鉛直断面について考えてみましょう。 鉛直断面は、次のような中心統合構造になります。 このように構造化することで、内部と外部とを分けることと、内部と外部とを分けないことという、一見矛盾することを、同時に実現する構造を作ることができました。2次元では矛盾することを、3次元で統合することができたという言い方もできます。
 
また、代表・副代表の役割は、鉛直断面では中心統合構造の中心の位置づけになりますが、水平断面で見ると、内側を整えたり育成したりする器の位置づけになり、中空均衡構造において内部と外部とをゆるく隔てる細胞膜の位置づけになります。
 
このように、トーラス型というのは、西洋的な中心統合構造(ピラミッド型)と、日本的な中空均衡構造とを3次元で統合したものと見なすこともできます。 本稿では、非平衡開放系で循環する組織構造を、トーラス型集合体としてモデル化しました。このモデルは、まだ、生まれたばかりであり、さまざまな形に発展させたり、解釈したりすることが可能です。
 
今後、さらに、探究していきたいと思います。
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