自己組織化を具体的ストーリーで探求してみよう! 〜コレクティブストーリーハーベスティング〜 vol.1-3

ストーリーテラー 嘉村賢州さん、田原真人さん  
前編▶︎「なんで俺たちを巻き込むんだ!」超ネガティブチェックインからスタート

参加者がたった15人

そして、2回目の2日間研修に向けて、事前会合を開催して準備を進めていきました。

AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー) という手法をベースに行うことになりました。AIは、みんなが思い描く素晴らしいチーム状態をみんなで夢見るというワークです。

ところがここで問題が発生しました。

2回目からは、強制参加ではなく、参加したい人が参加する研修にしたのですが、部門長が15人しか集まらなかったのです。

強制参加で対話した初回の研修は、めちゃくちゃ良かったんですよ。泣く人もいたぐらいなんです。でも、有志で参加となった瞬間、ほとんど集まらなかったんです。

そうなると、「有志って言ったけどやっぱりちょっと説得して半強制にしましょうか。」というメンバーも出てきたりして、

覚悟を決めていた若手の人事担当者も、役員に「絶対信じてください。」と言った手前もあり、揺らぎ始め、心が折れかけているように見えました。

それでも、「たった15人でも、ここに可能性があると感じて集まろうとしてくれている人がいることは価値だと思いますよ!」と伝え、15人で2日間の研修をしました。

そして、この研修がものすごく豊かな場になったのです。


講師が作るメカニズムに乗る段階から、自分たちの意思で枠組みを変えていく段階へ

そして、いよいよ最終回の事前会合が始まりました。この辺りから事前会合の質がさらに高まっていくんです。

最終回に向けた事前会合のメンバーは15人。チェックインがどんどん長くなっていきました。

「うちの部門で初めてワールドカフェやってみました!そしたらメンバーから家族感謝デイをやりたいという声が出てて、家族に参加してもらって職場ツアーを開催すると、すごく盛り上がりました。すると働いてるメンバーが今まで以上に仕事に誇りを持つようになって、どんどん新しい提案をするように変わってきたんです。」

というように、チェックインで各現場でこれまでの学びを実践してみた自慢話が聞こえてくるようになってきたのです。

そして、勇気を持って現場でファシリテーションにチャレンジするメンバーも増えてきました。

同時に僕が一番嬉しかったのは、最終回に向けた事前会合の終わり際に、「ちょっと賢州さん、今の話をこの後10分で終わらすっていうことはダメだと思います。みんな忙しいかもしれないけど1時間延ばしませんか。」と言うのです。

「外部講師が来て、外部講師が作っているメカニズムに乗る」という段階から、自分たちの目的を達成する上でその枠組みって、本当は変えることができるでしょ。というスタンスになっていたんです。

さらには、2回目の研修には15人しか集まらなかったので、「俺も関東のところで4人は絶対に口説いてみせるから、名古屋はおまえ、3人は集めろよ。」とか、「この場でに部門長だけで集まってるのはもったいないよね。役員を何人絶対に巻き込もう!」みたいな感じで周囲を巻き込んでいくようになり、だんだん温度が高まっていく中で、最終回の2日間研修に向けた事前会合は進みました。


こんな状況で会社に愛なんて芽生えると思えない。だから、残り5年で何ができるか本気で考えたい

自分たちもファシリテーション能力をつけられるような3日間にしたいという思いが、わき上がっていたので、アートオブホスティングという、参加者でありながら、ファシリテータートレーニングも積めるプログラムをベースにカスタマイズしたプログラムをすることになりました。

最終回には40人が参加しました。そして、本当に豊かな場になったのです。

初回の2日間研修で、「俺はあと5年でリタイアするんだぞ。平穏に終わらせて欲しいのに、なんでこんなことに巻き込むんだ」と言っていた人が、

最終回では、

「残り5年しかない。俺にはめっちゃ怖い先輩がいた。でも彼は、『尻拭いは俺がするから、好きなことをやれ!』と言ってくれる破天荒な先輩でもあった。その先輩の下で本当に好きなことをやらせてもらって、この会社が好きになったんだ。でも、今の若者ってコンプライアンスとか含めてがんじがらめすぎるのでは。こんな状況で会社に愛なんて芽生えると思えない。だから、残り5年で何ができるか本気で考えたい。

とを泣きながら話してくれたのです。もう本当に人の美しさを感じる瞬間でした。

また、役員が覗きに来てくれた時に「こういう対応の何が意味があるの?」ということを聞かれると、事前会合から参加している部門長が「こういう意味があって、こういうことが実際に生まれているんです!」と即答で返すので、役員がその即答ぶりに驚いていたということもありました。

そのような感じで最終回の3日間が終了し、そして半年間の僕たちの役割も終わりました。


外部のファシリテーターという存在がなくても、組織が活性化し続けている状態へ

その年の12月。人事の担当者と一部の部門長たちと一緒に忘年会をしましょうとお誘い頂きました。そこで、その後いろいろなことが起こっているというお話を聞かせてもらいました。

一つは、毎年年末に全役員と全部門長が集まる経営会議があるが、いつも本当に面白くないほうれん草で終始していて、せっかく会社の中核が集まっているのに、本当に無駄な時間になっていると感じていたので、

部門長たちが、役員に直談判して「俺たちで進行させてください」と経営会議をジャックしたというのです。

みんなで役割分担してオープニングムービー作り、途中ワールドカフェをやって、最後エンディングムービーまで作ったそうです。

さらに、「こういう対話の場を終わらせてはいけない」と、関西関東それぞれ「部門長カフェ」という対話の企画を続けることにしてやっているというのです。

他にたくさん自慢話や、新しいプロジェクトが生まれているということも聞き、本当に嬉しかったです。

半年間関わらせていただく中で、部門長の皆さんが自分の意思で動き、そして外部のファシリテーターという存在がなくても、組織が活性化し続けているという状態が生まれていったという、私のストーリーテリングとしてお話させて頂きました。

ありがとうございました。

 

続き▶︎Q&A 半年間プロジェクトで一番難しいと感じた瞬間は?

 

ストーリーテラー  嘉村賢州(かむらけんしゅう) 場づくりの専門集団NPO法人「場とつながりラボhome’s vi」代表理事、東京工業大学リーダーシップ教育院特任准教授、『ティール組織』(英治出版)解説者、コクリ!プロジェクト ディレクター(研究・実証実験)。集団から大規模組織にいたるまで、人が集うときに生まれる対立・しがらみを化学反応に変えるための知恵を研究・実践。研究領域は紛争解決の技術、心理学、先住民の教えなど多岐にわたり、国内外を問わず研究を続けている。実践現場は、まちづくりや教育などの非営利分野や、営利組織における組織開発やイノベーション支援など、分野を問わず展開し、ファシリテーターとして年に100回以上のワークショップを行っている。2015年に1年間、仕事を休み世界を旅する中で新しい組織論の概念「ティール組織」と出会い、今に至る。最近では自律的な組織進化を支援する可視化&対話促進ツール「Team Journey Supporter」を株式会社ガイアックス、英治出版株式会社と共同開発。2020年初夏にサービスをローンチした。

 

グラフィックレコーディング  関美穂子(せきみほこ) 鹿児島大学で文化人類学を専攻。旅行代理店、地域おこし協力隊を経て2017年に起業。現在は東京を拠点に、個人に対して一対一の対話とリアルタイムの視覚化を組み合わせた思考の整理サービス「可視カフェ」や、企業やイベントに対して議論や対話の場でのグラフィックレコーディング、ファシリテーショングラフィックの実践を行っている。https://docs.google.com/…/1hymqkXdDCIYdn8BpmT…/edit…

 

この記事を書いた人  伊原淳子(いはらあつこ) 自己組織development運営メンバー。茨城県在住。銀行勤務、モンテッソーリ教室講師を経て、2019年に、学び・組織・社会のパラダイムシフトを目指して活動している集合体「トオラス」に出会い、「自己組織化」についての学びを続けながら、地域のコミュニテイづくりも。2020年より手放す経営ラボラトリー研究員。「お互いのニーズやパーパスに耳をすませたとき、絶妙でより面白い未来像が現れる」そんな場作りを通して、一人ひとりが本来持つ力を解き放ち、共に創ることを喜び合えたら嬉しい。

 

 

 

 

 

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