自己組織化を具体的ストーリーで探求してみよう! 〜コレクティブストーリーハーベスティング〜Vol.1-6

ストーリーテラー 嘉村賢州さん、田原真人さん
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「なんか怖い」から「安心感のある場」へ

子どもたちの場が段階的に深まっていく様子がとても興味深かったです。最初は、「なんか怖い」みたいな雰囲気もあったのですが、まずは、運営チームと子どもたちの間の敷居を低くしていきました。

チェックインを子ども達だけでやって、大人はサポートするという形でやっていたのですが、子どもたちに混ざって大人も全員チェックインとチェックアウトをするように変更しました。チェックイン・チェックアウトするとき、話した人が次の人を振るのですが、子どもから大人に振られたり、大人から子どもに振られたりと混ざるようになっていきました。

呼び方も、例えば僕は”田原タン”という名前にしたんですが、最初は”田原タン”さんと少しよそよそしさがあったのですが、だんだん”田原タン”と呼んでもらえるようになり、距離も近づいていく感じがありました。グループ対話でのテーマも、最初は「鬼滅の刃」などのアニメや歌などのことが多かったのですが、次第に、自分のことを話してくれるようになっていきました。

さらに、あとから入ってきてついていけていないような子をサポートしてくれるような動きも出てきて、自然と助け合いのコミュニケーションも生まれていきました。そういったコミュニケーションをチェックアウトで、「あれは本当に良かったと思うよ。」と気づきとして共有すると、自分たちも嬉しかったことを自ら発見して共有してくれるようになっていきました。「〇〇ちゃんがグループの中でリーダーシップを発揮してしきってくれたので話しが進んだ」とかお互いに褒めたり、感謝を伝え合うような文化が生まれていきました。

そのあたりで、ファシリテーターを中学生に渡そうということになりました。そして、ファシリテーターをやりたい人に手をあげてもらって決めるという場づくりから、中学生にファシリテートしてもらうことにしました。そうやって、場をファシリテートしたり、企画したりというところから中学生も巻き込んで一緒に進めていくようにしていきました。そのようにして、大人の手を少しずつ引いていくようにしていったんです。

面白かったのは、対話の場で、いつもご飯を食べてる子がいたんですよ。その子がファシリテーターになったんですが、ファシリテートしているときもご飯を食べているわけですよ。そんな様子を見て、ここはそれだけ安心感のある場に育っていっているんだなと感じましたね。即興演劇や、ダンスや仮装など、いろいろなことをやっていったのですが、最初の”なんか怖い”の状況から、そんなことまでやっちゃうんだ!そうやって自分のことを表現できるようになったんだ!と感じられるようになっていきました。

最後の2回は、自分たちで企画して実施するという形をとりました。これまでの経験から、子たちから出てきたアイデアは、オープンスペーステクノロジー(OST)的(*)にテーマを決めて、そこで集まったグループで即興劇をつくって発表するというとても複雑な企画でした。

そして、その企画を実施した日は、子どもたちがファシリテーターもつとめ、3つのグループができてそれぞれ即興劇を発表し、時間内に終わらせたのです。本当に素晴らしかったです。

 

出番を感じた人がリーダーシップをとっていく

あらためてプロセスを振り返ってみると、まず、プロジェクトメンバー8人のチームビルディングを丁寧に進めることができたことで、土台が築かれ、子どもたちと大人たちの関係が縦の関係から、少しずつフラットな関係になっていきました。

そして、子どもたちの安心安全の場が築かれていくにつれて、子どもたちがコミットして参画してくれるようになっていきました。恐らく子どもたちの何人かは来年高校生になって、アルバイトでこのプロジェクトに関わってくれると思います。そうして人が循環していくのだろうなと感じています。

この経験から、卒業した組織でいつのまにかヒエラルキー的にトップになってしまい、難しい状況に立たされたことへの振り返りも自分の中では総括できてきました。

自分が得意で価値を提供するほうがいいシーンもあります。例えば今回のケースでは、クライアントの新規事業担当者が車内の稟議を通すための資料を作らなければならない時に、このプロセスを言語化し、全体の概念マップを作って説明するようなところは自分が得意なところですので、自分が価値を提供しました。役割が終われば自分は一歩ひいて、次のシーンで出番を感じた人がリーダーシップをとって活躍するという状況になっていきました。

必要に応じてその場で価値を提供できる人がリーダーシップをとって出ていって、順番に活躍していくような活動がこのチームではできていたと思います。

組織で難しい状況を経験したうえで、今回の経験から、次の一歩として少し光が見えてきています。ありがとうございました。

*オープンスペーステクノロジー(OST)関係者が一堂に会して話し合うホールシステム・アプローチの代表的な手法。テーマに沿って、参加者自らが解決したい問題や議論したい課題を提示、進行の段取りも自主的に決めるなど、個人の主体性を重視することで参加者のコミットメントを最大限に引き出すのが特徴。


▶︎続き(Q&A)「オンライン活動におけるここ10年間の変化は?」

 

ストーリーテラー 田原真人(たはらまさと) フリーの社会活動家 文筆家&講演家(オンライン化による学び、組織、社会のパラダイムシフトについて)デジタルファシリテーター、非暴力アナーキスト。自己組織化一筋約30年。生命論的世界観における教育、組織、社会のデザインを探究している。「反転授業の研究」でのオンラインコミュニティ運営、自律分散型オンライン組織「トオラス」の経営を経て、2021年は、参加型社会学会を立ち上げ、社会のパラダイムシフトに取り組む予定。『Zoomオンライン革命』『出現する参加型社会』(2021年3月出版予定)など著書11冊。IAF Japan理事。デジタルファシリテーター。非暴力アナキスト。マレーシア在住10年目。   

グラフィックレコーディング 関美穂子(せきみほこ) 鹿児島大学で文化人類学を専攻。旅行代理店、地域おこし協力隊を経て2017年に起業。現在は東京を拠点に、個人に対して一対一の対話とリアルタイムの視覚化を組み合わせた思考の整理サービス「可視カフェ」や、企業やイベントに対して議論や対話の場でのグラフィックレコーディング、ファシリテーショングラフィックの実践を行っている。https://docs.google.com/…/1hymqkXdDCIYdn8BpmT…/edit…

この記事を書いた人 伊原淳子(いはらあつこ) 自己組織development運営メンバー。茨城県在住。銀行勤務、モンテッソーリ教室講師を経て、2019年に、学び・組織・社会のパラダイムシフトを目指して活動している集合体「トオラス」に出会い、「自己組織化」についての学びを続けながら、地域のコミュニテイづくりも。2020年より手放す経営ラボラトリー研究員。「お互いのニーズやパーパスに耳をすませたとき、絶妙でより面白い未来像が現れる」そんな場作りを通して、一人ひとりが本来持つ力を解き放ち、共に創ることを喜び合えたら嬉しい。

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