自己組織化を具体的ストーリーで探求してみよう! 〜コレクティブストーリーハーベスティング〜 vol.1-4

ストーリーテラー 嘉村賢州さん、田原真人さん

嘉村賢州さんが自己組織化のストーリーを語ってくれたあと、参加者のみなさんからの質問に答えてくれました。

*嘉村賢州さんが語ってくれた自己組織化のストーリーはこちらです。

ストーリーvol.1-1〜なぜ結果をコミットせずに、プロジェクトをスタートすることができたのか

ストーリーvol.1-2〜「なんで俺たちを巻き込むんだ!」超ネガティブチェックインからスタート

ストーリー vol.1-3〜外部のファシリテーターという存在がなくても、組織が活性化し続けている状態へ

Q 今の時代だったら、何かやり方は変わりそうですか?

今回のお話は10年前のお話ということでしたが、今やるんだったら何かやり方って変わりそうですか?

A 研修の一部でオンラインを使う可能性も

このプロセスでは全くデジタルを使ってないんですよね。

この研修は全てリアルで開催していたので、現場を抜け出せないから参加できないなど、全国からの集まりにくさというのはありました。一部をオンラインにすることで、思いはあったけど物理的な制約で参加できなかった人も集まれたかもしれないですね。

対話は、日が経つとエネルギーが冷めてしまう部分もあるので、対話の火を絶やさないという意味でも、オンライン環境を使ってできることもありそうです。

自己組織化的なプロジェクトはある程度できたと思うんですけど、自己組織化的な組織ムーブメントにするという意味では、もうちょっと情報の見える化とか組織構造の見える化とか、意思決定の工夫とかっていうところで、もう少しサポートできたことがあるんじゃないかなという感じはしますね。


Q 半年間プロジェクトで一番難しいと感じた瞬間は?

半年間プロジェクトを進められた中で一番難しいと感じた瞬間は、どんな瞬間でどんな出来事でしたか。

A ダメじゃないかという空気でもやり続けるというタイミング

序盤は相当ネガティブで、できない理由を考える罵詈雑言の嵐だったので、そのときに、僕のメンタルを維持できるのかっていうところですね。信じてはいるけどもやっぱり直接言われると痛いです。

場に委ねてもらうために、場を作っているファシリテーターに対する信頼が欠かせない中、こいつに乗れるのかって思ってもらうのは、結構ヒリヒリしながらやっていた感じがあります。

もう一つは、これやったらどうなるんですかという結果が、皆さんの関心事項ということですね。勝てるゲームには乗るけども勝てないゲーム には乗りたくないという人の心情の中で、全然集まってないけどほんとに大丈夫なんですか?というときに、「大丈夫です」と言い切るの違うじゃないですか。

大丈夫!というのは、みんなで作っていくのだけれど、空気ってすぐに変わるので、いけるぞっていう空気も、一気にダメじゃないかっていう風に変わって本当に立ち消えちゃいそうになることもある。ダメじゃないかという空気でもやり続けるというタイミングは、ヒリヒリしましたね。

この時は若手人事の方が肝が座ってました。揺れてても「やりきる!」「もう一回やるんです!」というところがありました。でも、彼の心が折れていたらきつかったかもしれません。

そういう意味では、まだ個人依存ところもあったのかなぁ。そこは難しかったところですね。

一定層、ここにかけてる人がいてくださったので、たまに事前会合に出てくる人で、ネガティブな発言が出ていても、それで場が壊れることはなかったので、1人も2人でもチェンジャーエージェント的な熱量のある人がいるとファシリテーターとしてはやりやすいですね。



Q 会社をこう変えよう!こう変わるべきだ!という方向にいかなかったのは?

組織の中だと、会社を変えよう!こう変わるべきだ!という方向に行ってしまうこともあるのではないかと思います。そんな中、今回のケースでは、ファシリテーションで対話の場を広げていこうみたいな方向にうまく乗っていったのは何が要因だと思いますか?

A 愚痴とか批判とかはまずは全部吐き出してもらう

僕のアプローチなんですけども愚痴とか批判とかまずは全部吐き出してもらって ok という感じなんですよね。

そこは、とことん言ってもらいつつも、そのあとに、例えば AI (アプリシエイティブ・インクワイアリー)インタビューという、一人一人の自分が一番生き生きとしたところのエピソードを思い出してもらったりとか、個人のストーリーや、哲学、成功体験なども引き出すようなアプローチをします。

愚痴とか会社の批判はするなというと、構えちゃって安心安全な場じゃなくなるので、それも言ってもらいつつ、自分の内面も語ってもらうことで、他人事批判で周りを変えようとするのではなく、自分から変わっていこうよという空気をつくっていくようなファシリテーションをしています。

個人の原点を大事にするところは欠かさないですね。

特にAI という手法の良いところが、過去の成功体験の中のチームワークとか組織の経験を語るんですよ。自分の人生経験の中でどんなチームと組織のときに自分らしさが出て、力が発揮できたかというのを思い出すと、そういう時って他責の人同士の場ではないわけですよね。

自分事で捉えて、自分から動いたり、ケアしあったり、そういうことを自分の経験に紐づけて思い出してもらったうえで、

「もし今の組織がそんなチームだったとしたら、どんな結果を生み出せそうですか」という夢を描くワークをやってみたりすると、日常の仕事でもいつもと違うワクワクする夢が出始めてきます。

こっちからこう動いてくださいと言わなくても、皆さん「自分ごととしてやっていこう!」という動きが生まれてくるのはすごく不思議ですね。Q しんどいことがあっても、そこの場に立てた原動力・源は何だったのですか?

A クライアントと運命共同体に

ファシリテーターチームの5人は、違う所属のメンバーだったのですが、その5人のチームが自分を支えてくれたというのがまずあります。

さらに、人事部と一部の部門長と僕ら5人が語り合う中で、運命共同体になっているような感覚がありました。

「お金払ってるんだからこれぐらいパフォーマンス作ってくれないと困りますよね。」みたいな発言はほぼ出なかったのです。

別の案件で、外部組織コンサルの発注者と受注者という関係になっていたケースは、すっごくしんどかったですね。

このケースでは、人数が集まらなかった時も、「賢州さんが言ったような事やったから集まらないじゃないですか」みたいなことには絶対にならなくて、これ一緒にどうしましょうかという感じになっていく。

クライアントとファシリテーターチームが運命共同体になっているので、一緒に悔しいという思いはあるけれど、自分の能力が低いからこのプロセスがうまくいってないんじゃないかという過度なプレッシャーを背負うみたいなことなかったですね。

常に背中を預けあってるチームでやれたことが、走りきれた要因だった気がします。



Q 個人依存と感じたところは、今だったらどうしますか?

人事担当者の熱意が、くじけそうなときにも支えてくれたけれど、それは、個人依存的なところがあったかもしれない。ということでしたが、そうならないようにするために、今だったらこうしたい、ということがあれば、教えてください。

A 個人のパーパスについて語る機会を増やす

今だったら、初期のコアチームづくりにおいて、ティール組織でいうところの個人のパーパスみたいなことを話す機会をもう少し増やすでしょうね。

もう少しコアチームの一致団結感が高まっていると、一人依存にならないのではないかと感じます。あの時は、僕の中で個人のパーパスみたいなものがまだ弱かったように思います。

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次回から、田原真人さんの自己組織化ストーリーをご紹介させていただきます。

 

ストーリーテラー  嘉村賢州(かむらけんしゅう) 場づくりの専門集団NPO法人「場とつながりラボhome’s vi」代表理事、東京工業大学リーダーシップ教育院特任准教授、『ティール組織』(英治出版)解説者、コクリ!プロジェクト ディレクター(研究・実証実験)。集団から大規模組織にいたるまで、人が集うときに生まれる対立・しがらみを化学反応に変えるための知恵を研究・実践。研究領域は紛争解決の技術、心理学、先住民の教えなど多岐にわたり、国内外を問わず研究を続けている。実践現場は、まちづくりや教育などの非営利分野や、営利組織における組織開発やイノベーション支援など、分野を問わず展開し、ファシリテーターとして年に100回以上のワークショップを行っている。2015年に1年間、仕事を休み世界を旅する中で新しい組織論の概念「ティール組織」と出会い、今に至る。最近では自律的な組織進化を支援する可視化&対話促進ツール「Team Journey Supporter」を株式会社ガイアックス、英治出版株式会社と共同開発。2020年初夏にサービスをローンチした。

 

グラフィックレコーディング  関美穂子(せきみほこ) 鹿児島大学で文化人類学を専攻。旅行代理店、地域おこし協力隊を経て2017年に起業。現在は東京を拠点に、個人に対して一対一の対話とリアルタイムの視覚化を組み合わせた思考の整理サービス「可視カフェ」や、企業やイベントに対して議論や対話の場でのグラフィックレコーディング、ファシリテーショングラフィックの実践を行っている。https://docs.google.com/…/1hymqkXdDCIYdn8BpmT…/edit…

 

この記事を書いた人  伊原淳子(いはらあつこ) 自己組織development運営メンバー。茨城県在住。銀行勤務、モンテッソーリ教室講師を経て、2019年に、学び・組織・社会のパラダイムシフトを目指して活動している集合体「トオラス」に出会い、「自己組織化」についての学びを続けながら、地域のコミュニテイづくりも。手放す経営ラボラトリー研究員。「お互いのニーズやパーパスに耳をすませたとき、絶妙でより面白い未来像が現れる」そんな場作りを通して、一人ひとりが本来持つ力を解き放ち、共に創ることを喜び合えたら嬉しい。

 

 

 

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