自己組織化を具体的ストーリーで探求してみよう! 〜コレクティブストーリーハーベスティング〜 vol.1-2

ストーリーテラー 嘉村賢州さん 田原真人さん


 前編▶︎「半年たったらこういう結果がでます」という研修プランは、引き受けられない

「なんで俺たちを巻き込むんだ!」超ネガティブチェックインからスタート

研修のゴール設定はしていませんでしたが、最初に緩やかに決めていたことがあります。

半年間で、3回ぐらい合宿をして、全国にいる120人の部門長たちと対話を通じた変革プロジェクトをしていきましょう。というものです。

それでも、僕は部門長たちを強制参加はさせたくありませんでした。基本は、有志の人たちから、だんだんうねりが広がるということをやりたかったので、全員参加の半年シリーズの研修みたいなことはしたくなかったのです。

とはいえ、この組織に対話の文化はなく、ファシリテーションなど知らな過ぎるという状況でした。だから、有志で手を上げてもらっても、恐らく何も動かないだろうということでした。

そこで、一回目は対話という力を感じてもらうために強制参加の研修にし、2回目以降は有志の参加による研修にして、徐々に広げていこうということになりました。

初回の全部門長に強制参加してもらう2日間の研修づくりが始まりました。

人事だけで研修を作らない前提ですので、事前会合に、部門長の有志4〜5人(有志といっても最初なので、多少お願いする形になりました)、人事部3人、僕らファシリテーターチームで集まりました。

その時のチェックインが象徴的でした。

部門長たちから「なんでこんなものに俺たちを呼ぶんだ」「なんかよくわからん。こういうことは人事部の仕事だろ」「研修をやるのは別にいいけど、なんで俺たちを巻き込むんだ」「こういうことをやってる意味が分かりません」「なぜこういうのに3〜4時間も使うんですか?」

といった超ネガティブなチェックインが続いたのです。

僕もそのときはまだ30歳くらいで、内心ドキドキしながらも平静を保ちながら、チェックインしました。

統率型では達成が難しい野外ワークによる学びを日常に落とし込む

事前会合では、まず、一人一人の課題意識や、本当はこうあるべきと感じていることを語ってもらいました。

そして、2日間の研修をどうデザインすれば部門長たちが心から「参加して良かった」「忙しい時間をこれにかける価値があった。」と思ってもらえるかをとことんまで議論しました。

1回目の3時間の事前会合の終わりのチェックアウトの一言は「う〜ん、まあようわからんけど、次も出ます」という感じだったと思います。

そうして、3回の事前会合を経て、初回の部門長強制参加の2日間研修を迎えました。120人の部門長を全員集めることはできないので、40人の2日間研修を3回行いました。

 1日目はプロジェクトアドベンチャーという野外でのワークを行いました。統率型のチームでは、なかなか達成できない課題もあり、みなさん悪戦苦闘しながら取り組んでいました。

そして2日目は、1日目の非日常の学びを、日常に落としこめるような内容で行いました。

「昨日の失敗、実は日常の業務でもおかしてませんか? 」「今回の学びを本当に活かすとして、あなたはどこで活かしたいですか?」「その中に自分のどんな思いがありますか」など、ストーリーテリングやワールドカフェといった対話ツールを使いながら探求していきました。

そのような2日間研修を行い、2つのことが起こったのです。

 

自分たちが丹精込めて考えたものが、何かしら結果になる体験を楽しみ始める

1つは、強制的に参加させられた40人のチェックアウトですね。それがすごく素晴らしかったのです。

「今回初めて、人事に対してやるな!と思いました。」「みんな同じような思いを持っていたのに全然分かち合ってなかったことに気づきました。」とポジティブなコメントがすごく多かったのです。

そして、事前会合に出てくれた部門長の方々の目が輝き始めたんです。これは嬉しかったですね。

今の大企業の仕事は、自分が頑張って企画して考えたものがプロダクトとしてお客さんに届いても、お客さんの反応ってなかなか直接味わうことができない仕組みになっていることが多いんですよね。

事前会合で、どうやったら部門長に本当に役に立つ研修になるかとことん話し合って、それでやってみると、いろんな結果出るわけですよ。

思った通りの反応もあるかもしれないし、全然伝わってないってこともあったりとか、そういうところで、その反応にすごくワクワクしているんです。

「ワークショップって本当に奥が深いし、人って一人一人違うし、予想通りには動かないし。でも自分たちが丹精込めて考えたものが、何かしら結果になるんだ。」ということを感じ、楽しみ始めていました。

さらに、その後、事前会合に参加してくれる部門長が10人くらいまで増え、熱量も高まっていることを感じました。

続き▶︎外部のファシリテーターという存在がなくても、組織が活性化し続けている状態へ

 

 

ストーリーテラー  嘉村賢州(かむらけんしゅう) 場づくりの専門集団NPO法人「場とつながりラボhome’s vi」代表理事、東京工業大学リーダーシップ教育院特任准教授、『ティール組織』(英治出版)解説者、コクリ!プロジェクト ディレクター(研究・実証実験)。集団から大規模組織にいたるまで、人が集うときに生まれる対立・しがらみを化学反応に変えるための知恵を研究・実践。研究領域は紛争解決の技術、心理学、先住民の教えなど多岐にわたり、国内外を問わず研究を続けている。実践現場は、まちづくりや教育などの非営利分野や、営利組織における組織開発やイノベーション支援など、分野を問わず展開し、ファシリテーターとして年に100回以上のワークショップを行っている。2015年に1年間、仕事を休み世界を旅する中で新しい組織論の概念「ティール組織」と出会い、今に至る。最近では自律的な組織進化を支援する可視化&対話促進ツール「Team Journey Supporter」を株式会社ガイアックス、英治出版株式会社と共同開発。2020年初夏にサービスをローンチした。

 

グラフィックレコーディング  関美穂子(せきみほこ) 鹿児島大学で文化人類学を専攻。旅行代理店、地域おこし協力隊を経て2017年に起業。現在は東京を拠点に、個人に対して一対一の対話とリアルタイムの視覚化を組み合わせた思考の整理サービス「可視カフェ」や、企業やイベントに対して議論や対話の場でのグラフィックレコーディング、ファシリテーショングラフィックの実践を行っている。https://docs.google.com/…/1hymqkXdDCIYdn8BpmT…/edit…

 

この記事を書いた人  伊原淳子(いはらあつこ) 自己組織development運営メンバー。茨城県在住。銀行勤務、モンテッソーリ教室講師を経て、2019年に、学び・組織・社会のパラダイムシフトを目指して活動している集合体「トオラス」に出会い、「自己組織化」についての学びを続けながら、地域のコミュニテイづくり。2020年より手放す経営ラボラトリー研究員。「お互いのニーズやパーパスに耳をすませたとき、絶妙でより面白い未来像が現れる」そんな場作りを通して、一人ひとりが本来持つ力を解き放ち、共に創ることを喜び合えたら嬉しい。

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